写真提供:金沢市
取材協力 金沢21世紀美術館金沢観光の人気スポット、
21世紀美術館の魅力に迫る
※金沢21世紀美術館は修繕工事(総合案内、トイレ等の改修工事のため)が終了し、2020年2月4日(火)から再開。
2016年の年間入館者数が255万人を記録した『金沢21世紀美術館』とその周辺をとりあげます。現代アートの入門にふさわしい、美術館の魅力を探り、金沢旅行の計画にお役立てください。
1. 建物と作品が一体となって
どこから見ても円盤のような建物。
建築物そのものがアートといえる円盤のような作りは新鮮。東西南北に入口があるが、どこから見ても円盤のような丸い美術館なので愛称は「まるびぃ」。市民からは「21美」(にじゅういちび)と呼ばれることが多い。
「まるびぃ」の魅力の一つは開放的なガラスが多数使われていて、公園の芝生と建物が一体となっているところだ。リラックスした中でアートと人を結びつけてくれる特別な環境だ。
設計者は姉島和世+西沢立衛/ SANAAで、国内外の美術館をてがけており、建築界のノーベル賞といわれる、プリツカー賞の受賞経験者。館内には彼らのプロダクトが多数展示されている。
この場所のために制作された作品の数々。
この美術館のためにつくられた作品も多く、展示室そのものがアート作品となっている。ここでしか味わえない体験をたっぷりと楽しんで。
レアンドロ・エルリッヒ《スイミング・プール》2004年
- 展覧会ゾーン
- 交流ゾーン
金沢21世紀美術館蔵 撮影:渡邉修 写真提供:金沢21世紀美術館
『金沢21 世紀美術館』の代名詞といえば、この「スイミング・プール」だろう。館内は入場料を払って入る展覧会ゾーンと、無料で入れる交流ゾーンとに分かれるが、このプールにはどちらのゾーンからも観覧できる。おすすめはやはり展覧会ゾーン。服を着ながらにプールを浮遊するような感覚になれるのだ。
金沢21世紀美術館蔵 撮影:渡邉修 写真提供:金沢21世紀美術館
上側(交流ゾーン)からはプールの底をのぞきこみたくなり、下側(展覧会ゾーン)に降りれば上にいる人を見上げたくなる非日常的な光景にテンションが上がり、だれもがカメラのシャッターを押してしまうだろう。
- 交流ゾーン
金沢21世紀美術館蔵 撮影:中道淳/ナカサアンドパートナーズ 写真提供:金沢21世紀美術館
作者のマイケル・リン氏は、この作品のために金沢に滞在し、当地の伝統技術である加賀友禅の歴史や手法を調査してつくられた作品。美術館の真ん中に位置する休憩コーナーに描かれた図柄は、館の設計者であるSANAAデザインのロッキングチェアの表面にも描かれている。座り心地を楽しみ、記念撮影する旅行者が多いので、休憩所は人気コーナーの一つとなっている。
パトリック・ブラン《緑の橋》2004年
- 展覧会ゾーン
金沢21世紀美術館蔵 撮影:中道淳/ナカサアンドパートナーズ 写真提供:金沢21世紀美術館
ガラスの廊下をまたぐようにつくられたパトリック・ブランの「緑の橋」。春夏秋冬を通じてバランスよく配置された植物。人が手がけることができるところと、植物の生命がおりなすことでできる作品。日光の向きを計算して南北には違う植物が配置されているので、逆側からも鑑賞してもらいたい。
ピピロッティ・リスト《あなたは自分を再生する》2004年
- 展覧会ゾーン
金沢21世紀美術館蔵 撮影:渡邉修 提供:金沢21世紀美術館
この作品はトイレを神聖な場所と見立てて、トイレに祭壇を設けている。食べたものが体内で血液、涙、内蔵組織へ変化する様を賛美するような映像が投影されている。着眼点がおもしろい。なお、男女のトイレ両方に、設置されているので、くれぐれも、どちらにも入ろうとしないように…。
圧倒的な迫力の作品たち。
アニッシュ・カプーア《L'Origine du monde》2004年
- 交流ゾーン
金沢21世紀美術館蔵 写真提供:金沢21世紀美術館館
コンクリートの壁面に巨大な黒い楕円。シンプルなものだが、黒い部分を見つめていくと黒い部分は穴なのか、盛り上がっているのか、次第に遠近感を見失いそうになる、おもしろい作品だ。一つの作品に部屋全体を使うという贅沢な作品が、この館内には多いが、それだけに楽しめるというもの。
ジェームズ・タレル《ブルー・プラネット・スカイ》2004年
- 交流ゾーン
写真はWEB 掲載NG のためお見せできないが、通称「タレルの部屋」といわれる作品は、交流ゾーンにあるので、日中から夜間まで観覧できる。天井は空間が空いているため、美術館を訪れる時間帯で表情が異なる。夕刻もおすすめだ。また冬の間はとくに寒さを感じるだろうが、嫌な寒さではない。大きな空間のためか、まるで洞窟に入り込んだかのような感覚になる。雪が降れば部屋の中に雪が舞うので冬に訪れるのもいいだろう。