超ピンポイントの気象情報を24時間確認できる、デジタル技術を使った「かかしの郷プロジェクト」
2023年10月27日(金) | テーマ/エトセトラ
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日光や雨など、自然の恵みをいただく農業にとって、刻々と変化する天気の情報はとても重要。最近はスマホで手軽に天気予報を知ることができるようになったとはいえ、いまだに多くの農家さんが頻繁に水田へ足を運ぶことから分かるよう、その精度はまだ完璧とは言えないようだ。
石川県の中央に位置する中能登町久江(くえ)地区では、2022年から最先端のIoT(モノのインターネット)技術を用いて気象情報を集める「デジタルかかし」を水田に設置している。元々地元の農家さんは隣町にある気象レーダーの情報を用いた天気情報サイトなどを使っていたそう。だが、厳密な現地の情報でないため、気温や湿度などにも多少の違いがあった。このデジタルかかしは、手に取り付けたセンサーで降水量や気温、湿度や風速など、現地の正確な気象データを取得。久江地区の農家を中心とした20名の利用者はスマートフォンでいつでも手軽にピンポイントの気象データを確認でき、風向きを見たり、作業時間の目安を考えたりと、農作業にも活かせて好評なのだそうだ。
なぜ最新のデジタル技術をかかしと掛け合わせたのだろうか。実は、こちらの久江地区には“かかしの神様”を祀る『久延毘古(くてひこ)神社』があり、かかしのワークショップなども行っていた。そこで地域住民が、地域のシンボルでもあるかかしとデジタル技術を掛け合わせた地域の課題解決を図る「農業DX」を中能登町役場へ相談。農業ITベンチャーの協力を得て、デジタルかかしが誕生した。
この取り組みを担当している中能登町役場の駒井さんは、「デジタルかかしも普及させたいが、最終目標はデジタル技術の便利さを多くの方に伝え、行動意識を変えることです。現在は住民の方々の意識がどう変わるか、実証実験している段階です」と話す。
中能登町としても、デジタルかかしで猛暑や台風などのデータを様々な防災対策に役立てている。例えば、夏場の午前8時以降の気温は34度から36度と高かったため、夏場の農作業は朝の4時からを推進するなど、熱中症対策の注意喚起なども行っているそうだ。
中能登町は2021年に内閣府からAIやIot技術を用いた地域課題解決を行う「未来技術社会実装事業」に認定。スマート農業を始め、最新のデジタル技術で地域の課題解決を目指す中能登町の取り組みに、これからも注目していきたい。
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