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【農援ラボ|畑の子】ピンチをチャンスに! 生産者から野菜の魅力を伝える立場へ

2024年5月1日(水) | テーマ/エトセトラ

石川県金沢市の中心部、企業や公共機関、文化施設などが立ち並ぶ本多通りに、ぽつんと佇む古民家風の一軒家がある。のれんをくぐり、すぐ右手にあるのは冷蔵のショーケース。イチゴやほうれん草などの見慣れた青果に加え、スイスチャードといった馴染みの薄い野菜も置かれている。

「珍しいからって、食事を終えたお客さんが購入していくことも多いんです」と話すのは、『畑の子』オーナーの濱田友紀さん。店で使用する野菜のおよそ7割を、濱田さんの夫が代表を務める、羽咋市の農業法人アグリスターオナガから仕入れているそうだ。

2022年3月に店をオープンする以前は同農園で野菜づくりに携わっていた濱田さん。当初は一般的な葉物類を育てていたが、付き合いのある飲食店からの要望をきっかけに西洋野菜も手掛けるように。「つくってみたら面白くて」と、従来の路地とハウス栽培に加えて水耕栽培も導入し、スイスチャードやホワイトセロリなどの西洋野菜を含む60品目ほどの農産物を栽培するようになった。

しかし、ある課題が濱田さんを悩ませる。思うように売れないのだ。スーパーマーケットや道の駅に並べても、食べ方がわからない消費者は西洋野菜を敬遠してしまう。扱い方を心得ている飲食店にしても、継続的に仕入れてくれるところは限られてしまうのが現実だった。

そこに追い打ちをかけたのがコロナ禍だ。取引先が続々と臨時休業になり、農園には出荷の目処が立たない野菜が残されたまま。だがピンチはチャンス。「いつか自分の店を持ちたかった」という夢にかこつけて、いましかないと飲食店を開くことを決意した。

農園の従業員にまかないをつくっていた濱田さんにとって、野菜料理はお手のもの。採れたての野菜を使って、自宅で食べ方を真似してもらえるようにプレゼンテーションしよう。ついでに野菜や農家仲間の加工品も置いたら喜ばれるに違いない……。「家庭料理と野菜マルシェ」というコンセプトは、事業計画を練り上げる過程で徐々に明確になっていった。

飲食店経営のノウハウもないまま、怒涛の準備期間を経て迎えた開店日。だが蓋を開けてみれば思いもよらぬ結果が待っていた。

「宣伝なんてほとんどしなかったのに、いきなり100個の弁当注文が入ったの。当初一緒にやっていた娘は仕込みのために店に寝泊まりするような状況で、半年間は無我夢中で働きました」

店の立地から勤め人の需要が多いのかと思いきや、近所にお住まいの人たちの利用がほとんど。しかもその95%が女性だという。改めてその要因を振り返ってもらうと、「やっぱり野菜がフィットしたんでしょうね、女性のお客さんに」と濱田さんはうなずいた。

野菜を個性に打ち出す飲食店は少なくないが、多品目の野菜を安定的に提供できるのは農家に出自を持つ畑の子が強みとするところ。たっぷりな野菜とともに肉や魚料理、季節の炊き込みご飯などをバランスよく味わえる「畑の子ランチ」は、「私が食べてほしいものをすべて込めた」自信のメニュー。ランチはこの一種のみだが、営業時間を三部制にして回すほどの人気となった。

「農家に嫁入りして真剣に農業に向き合ってきたけど、結局私は生産者にはあまり向いていなかったのね。お米のチラシを勝手につくって直売を始めたり、農家を続けながら雑貨屋のアルバイトを掛け持ちしたり、農業女子のネットワークを広げたり……。話し足りないくらい、これまでいろんなことがあったのよ」

その時々の行動はさまざまだが、つまりは生産者が無頓着になりがちだった、つくったその先の「届ける方法」をずっと考えてきたのが濱田さんだった。だからこそ「自身のやりたいこと」が、自然と「消費者の求めているもの」に結びつくのだろう。

野菜をもっと食べてほしいという気持ちは、次世代を担う子どもたちにも向けられる。すでに地域の小学校とコラボレーションし、児童が考案したメニューを店で提供する計画も進行中だという。

「店名が『畑の子』ですしね。これからは食育にも力を注ぎたいと思うの」と濱田さん。農家の枠を超えて広がるその活動は、「人とつながり、いいものを伝えたい」という思いとともにこれからも続いていく。


■家庭料理と野菜マルシェ  畑の子
住所/石川県金沢市本多町3-10-3
電話番号/076-205-6630
https://www.instagram.com/hatakenoko2022/

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※掲載されている情報は、2024年5月1日以前に取材した内容です。時間の経過により実際と異なる場合があります。

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