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【能登紀行】旧柳田村「合鹿」を訪ねて〜里山に囲まれる土地で歴史と自然に触れる:前編〜

2022年12月8日(木) | テーマ/能登紀行

〈 この連載・企画は… 〉
石川県能登在住の編集者が能登半島の気になる場所に行き、まだまだ知られていないその土地や人の暮らしに触れ、紀行文として紹介します。今回は能登町の旧柳田村を訪ねました。

金沢から車で約2時間。旧柳田村は石川県の北に位置する能登半島の中で唯一海に面していない内陸の地域だ。2005年の平成の大合併により、旧能都町、旧内浦町との合併で能登町となる。
今回訪れた「合鹿(ごうろく)」も旧柳田村の集落の1つ。この場所にはどのような魅力があるのだろうか。

▶︎旧柳田村合鹿を訪ねて

合鹿という集落について名前は知っていた。もちろんその土地で生まれた合鹿椀という古代椀も使ったことがあった。
それでも、どういった経緯で合鹿椀が生まれてきたのかや、この土地の歴史背景について知らなかったので訪ねてみることにした。

海育ちの自分にとって、のどかな里山の景色は新鮮で、秋が近づき少しずつ紅葉し始めた木々の景色に目を奪われる。
合鹿に着くと「合鹿椀の里」と書かれた柱が目に付く。そこからもう少し車を走らせた山の中に合鹿椀にゆかりのある『福正寺』があり、そこで坊守をされている方に話が伺えると聞き、お邪魔した。

福正寺の正門をくぐると目の前に本堂があり、真横には寺院の食事を準備する庫裡(くり)がある。今は瓦屋根だが、昔は茅葺き屋根だったそう。

合鹿という地名は、山の麓(ふもと・ろく)が合わさった場所にあるのでこの名がついたのが由来だという(麓には鹿の字が使われている)。その他にも轆轤(ろくろ)師たちが集まった(轆轤に鹿の字が使われる)からや鹿が多くいたからなどの説もあるそうだ。

福正寺は、金沢に木地を売りに行っていた木地師たちが蓮如上人の説教を聞き感動したことがきっかけで、1494年に木地師たちが中心となり建築されたという。

庫裡の中には輪島塗の食器が並ぶ。
庫裡の中には輪島塗の食器が並ぶ。
黒の椀が昔の合鹿椀、赤の椀が新しく作られた合鹿椀。
黒の椀が昔の合鹿椀、赤の椀が新しく作られた合鹿椀。

合鹿椀がいつ頃からつくられていたのかは不明だが、1694年には文献の中で確認され明治時代に途絶えた後に復活している。
合鹿椀は、床においても食事ができるよう高台が高くつくられていること、平安時代の渋下地漆器という技法を用いて輪島塗の特徴でもある布着せを行なっていることなどの特徴を持つ。

蓮如上人の教えの中に「3人集まったら講をつくれ」と言うのがある。講とは皆で食べ物を持ち寄り料理をして語らう場のことで、その時にご飯を山盛りにして食べていた。その際土間などでも置けるように土台がしっかりと作られたのが合鹿椀で、必要にせまられて生まれたものだ。

実際に手に取ると思ったほど重くはなく、迫力を感じる椀の大きさ厚みや艶やかな漆の美しさ、何よりこのお椀が使われていた当時の暮らしに思いを馳せ不思議な気持ちになった。

福正寺の拝観は電話での予約制だ。本堂や所有する合鹿椀を展示した屋根裏を案内いただく。合鹿椀の魅力とともにこの土地の歴史が分かり、県内外をはじめ、南米やイタリア、カナダなど海外からの訪問客や漆器職人も訪れ喜ばれているようだ。

屋根裏は展示室として改修されており、合鹿椀をはじめとした様々な美術工芸品が展示されている。
合鹿椀を作る時の轆轤や、食券代わりとして使われていた木札などもあり、当時の暮らしの様子が伺える。写真左は途絶えた合鹿椀を復活させた1人故・角偉三郎氏の作品が並ぶ。角氏の作品は世界的にも有名で合鹿椀の知名度を世界に知らせた功労者の1人だろう。

広間の襖には唐紙が用いられ当時のままの状態で残る。
広間の襖には唐紙が用いられ当時のままの状態で残る。
本堂の煌びやかな内陣と色鮮やかな天井絵に目を奪われる。
本堂の煌びやかな内陣と色鮮やかな天井絵に目を奪われる。

かつて木地師たちによって建てられた福正寺、そしてこの地で生まれた合鹿椀。
それは当時の暮らしの様子や人々の思いが形になり今日まで残ってきた。何気なく知っている場所でもその歴史背景を知るとまた違った見方でその土地やそこにあるものを捉えることができる。まだまだ能登の中にあるそうした魅力をこれからも追いかけていきたい。

住所

石川県鳳珠郡能登町字合鹿31-9

電話番号

0768-76-0290

営業時間

9:00〜16:00

定休日

なし(拝観の場合は電話で要予約)

拝観料

大人500円、高校生以下無料

駐車場

あり

公式サイト

浄土真宗 東本願寺派 飯林山 福正寺

※掲載されている情報は、2023年1月25日以前に取材した内容です。時間の経過により実際と異なる場合があります。

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