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金沢21世紀美術館の三代目館長に就任した島館長に、現代アートの楽しみ方を教えてもらいました

2017年6月27日(火) | テーマ/ニュース

『金沢21世紀美術館』三代目館長に就任された島敦彦(しま・あつひこ)さんが、新館長就任記念トークイベント「はじめまして、館長の島です。」で、金沢市民をはじめ、アートファンの前で話をされる機会があると聞きました。新しい館長さんはどんな方だろう?ということから、今後の美術館はどういう展開をするのだろう?ということも聞いてみたい!と思い取材に行ってきました!
話は期待していた以上に盛り上がり、現代美術の楽しみ方や、今後の美術館の話題にも話が及びました。今日はそのイベントの様子をレポートしたいと思います。

−−富山県出身の島館長は『富山県立近代美術館』『国立国際美術館』で学芸員として活躍されたのち、『愛知県美術館』館長を経験されています。2017年4月から『金沢21世紀美術館』の館長に就任されましたが、美術館の来館者数が昨年過去最高を記録したこともあり、新館長や美術館に寄せられる期待や関心はプレッシャーの一つだったようです。

司会:来館者がこれだけ増えたのはどうしてだと思いますか?
島館長(以下島):観光地にあるからお客様が来られるわけじゃないと思います。もちろん美術館が観光地の近くにあるからという面もあると思いますが、私は一番は建築だと思います。SANAAの妹島さん、西沢さんが作られた建築、学芸員さん達と色々議論されながらこうなったのだと思いますが、ガラスの箱ですよね。4ヶ所の入り口があって、予備知識なくここへ来たら、円盤が宇宙から降りて来たような形をしていて、ガラスの箱をみて美術館とは思わないかもしれません。作品が周りに点在されていて、子どもたちがそれにふれあう。人を誘うような装置が円形の建物の周りにもある。世界中に見て、まれな建築ではないでしょうか。建築の力というのはこれほどの力があるものかと、こちら(金沢)に来て改めて思いました。

talk

司会:現代美術の魅力とはなんでしょうか。
:わかりにくいところが魅力です。小説や映画などの作品で結末がよくわかならくても自分を責めようとは思わないのですが、なぜか美術だけは背景がわかっていないからわからないんじゃないかとか、自分を責めるようなことを思ったリして、それはおかしいなと思ったりします。ですがわからないけど惹きつけられるということがあります。わからないことも魅力の一つではないかと思います。学芸員の人も初めてみるものは実はよくわからないんです。わからないけど、少し調べて見ると魅力的だったりということでこの美術館でも紹介したりしています。そういう行動をお客さんにもなぞってもらいたいという気持ちがどこかにあるんです。映画もどんな展開になるかわからないとワクワクします。

司会:現代美術の楽しみ方について教えてもらえますか。
:安齊重男(あんざい・しげお)さんという写真家がおられて、展覧会が終わると保存ができなくてなくなってしまう作品やその場限りのパフォーマンスなどを写真として残すようなことをされています。彼に言われたことなのですが、「島さん、色々な展覧会をみているだろうけど、1回だけみただけではその作家のことを言えないよ、最低3回くらい個展を見てからだよ」と言われました。個展を3回ということは最低でも5年くらいかかるんです。「そのくらい作家の仕事を見続けてからやっとおもしろいとか感想が言えるから、とにかく見ないと始まらないよ」と教えてもらいました。
展覧会はいいものを勧められていいものを見るというのがいいと思っていましたが、どこがいいかわからなくても色々なものを見ているうちに、ここが突出していいなあとか、最初いいと思っていたけどそれほどでもないなあとか、こっちの方が面白いとか、長く付き合うというか。見方と言えばそれが見方だと。

司会:ジャーナリストは、島さんは展覧会をよく見ているよ、東京でも大阪でも見るし、どこに住んでいるのかわからないくらいよく見ているよとおっしゃってました。
:(島さんは)3人いるんです(笑)。

司会:そんな館長に聞きます。美術とは? 芸術とは何でしょう?
:これは想定問答です(笑)。これは長い間なかなか答えることができなかった質問ですが、作家の会田誠(あいだ・まこと)さんがテレビのインタビューで「あなたにとって芸術とは?」と質問されたときにだいぶ間が空いて「退屈しのぎです」と答えられたそうです。暇つぶしではないんです。人間の人生がますます長くなっています。それをしのぐのに芸術はもってこいなんです。制作する側、見る側にとってこれはいい。気が楽になりませんか。もっともらしいことを言われるより「退屈しのぎ」と言われると難しく考えなくてもいいように思えます。会田さんはいろんなインタビューに答えられていますが、あれが一番しっくり来たと言われていました。

−−「退屈しのぎ」と言ってもいい加減に作品を作るのではなくて、退屈しのぎだからこそ真剣に作品作りに取り組むということも話されていました。

audience

現代アートの中の『金沢21世紀美術館』〜今後の展開について〜
:開館当初、『金沢21世紀美術館』は最先端のアートのイメージがありました。60年代のアメリカならアンディ・ウォーホルとか、みんなの中で共有してこれという人が挙げられるような時代がありましたが、今は特定の国がすごいということはなくて、アジア、南米どの国もすごいアーティストが出てきています。価値観が変わって来ています。
例えば、ジャネット・カーディフ&ジョージ・ビュレス・ミラーのユニークな企画展が秋から予定されています。「見る」だけではなく「聴く」体験が重要になる展示です。
(あるいは)注目される若手作家を有名になる前に早めに展覧会をやっていきたいと思います。今は若手作家の川越ゆりえさんの展覧会をやっています(2017年9月24日まで)。たまたまではありますが彼女も私と同じ富山出身で、注目の国内アーティストが増えていますが、アジアの作家の紹介も手がけていきたいと思います。

参加者からの質問や要望
−−美術館の歴史がそうさせるのでしょうが、町と一緒に作品を展示したりと、町と一緒に歩んできた『金沢21世紀美術館』だからこそ、商店街の方をはじめ多くの質問や要望が挙げられ、館長の熱いトークと参加された方の熱気で、イベントは盛り上がりました。この美術館ならではの盛り上がりだったように思います。

−−現代アートの疑問も少し晴れた気がして私個人としても「参加してよかった!」と思えるトークイベントでした。島館長、ありがとうございました。今後の美術館の展開がさらに楽しみになりました!

取材協力
金沢21世紀美術館
http://kanazawa21.jp/

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