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【農援ラボ|アクアポートのある現場から②林農産】 地域の“かかりつけ農家”の矜持をもって、市街地で農と住の共存を目指す

2025年6月17日(火) | テーマ/エトセトラ

農援ラボ
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稲作の重要な工程であるとともに手間のかかりどころでもある水管理。その省力化に貢献するのが北菱電興の水田用自動給水機「アクアポート」だ。上限/下限用のふたつのセンサーで水位を感知し、自動での給止水を実現。電池で駆動し、設置も簡単。あえて機能をシンプルにすることで実用性と低価格を両立させている。
では現場での実感はどのようなものなのか。実際にアクアポートを導入した稲作農家を訪ね、これまで抱えていた課題と導入のきっかけ、導入前後の農作業の変化や今後の展望などを伺った。


直売所の入口の横には鏡餅を模した大きなオブジェ。駐車場に面した壁面には「23世紀型お笑い系百姓 林農産」と書かれたインパクトある看板が掲げられている。店を訪ねると、社長の林浩陽さん、そして取締役を務める息子さんの夢太さんが明るく出迎えてくれた。

林社長は自ら「お笑い系農チューバー」と名乗っている。本格的にYoutubeの動画投稿を開始したのは2015年から。現在は「林さんちのゆかいな米作り」チャンネルを運営し、年間約280本もの動画を投稿しているという。

「集客目的で始めたのに、蓋を開けたら視聴者は同業者ばかり」と笑う林さん。しかしこれまでの足取りを詳しく聞けば、そのクリエイター気質がいまに始まったものではないことがよく分かる。

林農産は林さんの父親によって1978年に設立された。しかし高校生だった林さんは農家を継ぐつもりもなく、地元の美大へ進学。卒業後は工業デザイナーとしてメーカーへ就職したが、父親に呼び戻されて予期せず就農することになった。

気持ちを切り替え、「ものづくりは、デザインも農業も同じ」と農業に向き合った林さんであったが、初めての稲刈りを終えたころには理想と現実のギャップにノイローゼになってしまったという。

「当時は(米の流通を規制していた)食糧管理法が廃止される前で、作った米を自由に売ることすらできない。農家はただ国の政策に従って農作物を作るばかりで、クリエイティブとは程遠かった」と林さん。その数年後には130万円もの大金を投じてパソコンを農業経営に導入したが、その布石は就農当初から続く切実な閉塞感にあったに違いない。

もっともこのエピソードには続きがある。その先進的な農業経営が評価され、1992年に天皇杯受賞という名誉にあずかったのだ。単に“新しもの好き”なのではなく、やると決めたらとことん追求する。Youtuberとしての活動しかり、約40年の長きに渡ってその熱量を失わずにいることに林さんの凄みがある。

あるいは林さんの創意工夫の歴史は、林農産のある石川県野々市(ののいち)市の土地柄とも無関係ではないだろう。金沢市のベッドタウンとして発展した野々市市は、いまなお人口増加を続ける地方都市の鑑のような自治体。ただ一方で、その活況は農家にとっては悩ましくもあるという。

「市街地にあるからいろいろ気を使うし、地主さんの事情で田んぼが宅地化されてしまうこともよくある。そもそも農業不適地なんよ。精神的にも物理的にもね」

林農産の圃場は合わせて45haになるが、多数の地主から土地を借りていることもあり1枚の平均は7aほど。600枚近くの小さな圃場が分散しているため農作業の手間はどうしても増えてしまう。おまけに同地域は“超”がつくほどの乾田地帯で、水持ちが非常に悪い。

もはや宿命的ともいえる農地の課題。それでもどうにか有効な解決法はないかと模索するなかで目をつけたのが、北菱電興の水田用自動給水機「アクアポート」だった。

林農産の圃場は合わせて45haになるが、多数の地主から土地を借りていることもあり1枚の平均は7aほど。600枚近くの小さな圃場が分散しているため農作業の手間はどうしても増えてしまう。おまけに同地域は“超”がつくほどの乾田地帯で、水持ちが非常に悪い。

もはや宿命的ともいえる農地の課題。それでもどうにか有効な解決法はないかと模索するなかで目をつけたのが、北菱電興の水田用自動給水機「アクアポート」だった。

「これまでは減水深(1日に下がる水位)が大き過ぎて、急に下がってから給水するのではタイミングが間に合わんかった。決められた水位で給止水を自動で繰り返してくれるだけでも十分に効果はあって、アクアポートを取り付けた田んぼで収量が10〜20%増えたという計測結果が出たんよね」

現在は計20台のアクアポートを所有し、年内に追加購入も検討中。持ち前の宣伝力のたまもので、近隣の米農家もアクアポートを積極的に導入しているという。Youtubeの紹介動画の反響も大きく、特に同業者にとっては市街地の小規模圃場という実践環境が参考になっているらしい。

「俺は都市部の人たちに“かかりつけ農家”を持ってほしいと言っているんだ。いま令和の米騒動なんて言われているけど、スーパーで生産者の顔が見えない買い方ばかりしていると、パニックに巻き込まれてしまうことになる。こんなときに普段から付き合いのある農家があればリスク軽減になると思うのよ」

農と住の共存は、どちらか一方の道理を通すだけでは成り立たない。米作りの根幹を支える水管理もまた土地の制約を受けやすいが、課題に改めて向き合うことで農家が地域に必要な存在であり続けられることを、林さんは身をもって体現している。

■今回の農家さんが導入したモデルは……


【製品名】アクアポート(AP-001)
製品詳細はこちら
https://www.hokuryodenko.co.jp/aquaport/

【取材協力】
林農産
住所/石川県野々市市藤平160
電話番号/076-246-1241
公式サイト https://www.hayashisanchi.co.jp/
公式Youtube https://www.youtube.com/@HayashisanchiJp23owarai

※掲載されている情報は、2025年7月3日以前に取材した内容です。時間の経過により実際と異なる場合があります。

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