時計は楽器
2014年10月16日(木) | テーマ/エトセトラ

にし茶屋街から道路を挟んだ、野町広小路の交差点近く。ウィンドウに木馬が飾られ、店内に多くの掛け時計が並べられた、とても気になるお店があります。そのただならぬ雰囲気のお店の名前は「工房亞陀(あだ)」。全国のコレクターたちが順番待ちで依頼する、古時計の修理・修復の専門店です。
以前から気になって仕方がなかったお店に足を踏み入れ、和時計師の「匠亞陀(たくみあだ)」こと井上悦朗さんに、いろいろとお話を伺いました。
家業であった時計店を継ぎ、古時計の修理・修復を専門とする今のスタイルに行き着いたのは今から15~6年前のこと。消費され、破棄されるものではなく、壊れても、修理をして永く使えるものだけを扱おうと一念発起。井上さんは「うちはお客さんを選ぶ変わった店。わたしが納得できない人には売りません(笑) うちの時計を買ったお客さんは、その時計を次世代 に継承する義務が生じるんです」と嘯いてみせますが、その言葉には、古時計への並々ならぬ愛情がみなぎっています。
工房に並んでいるのは、今から100年以上も前の、ドイツやフランス、アメリカで生まれた古時計が中心(その品質はドイツ製品が圧倒的に優れているのだとか)。動いていない時計でも、気になる時計があれば海外のネットオークションで落札。動いていない原因を見つけ、紛失したパーツを探し、壊れたパーツを作りながらの修理や修復は、かなり骨の折れる作業ですが、「古時計が一番喜ぶのは元の姿に蘇り、理想的なオーナーから愛され永遠の息吹を得られる事」という信念を胸に、日々作業に没頭する姿は、まさしく職人そのもの。時計を修復していると「当時の設計者の思想がわかる」なんて、クラフトマンならではの世界観です。
そして、もう一つ、忘れられないのは、井上さんの「時計は楽器」という言葉。ゼンマイを巻いて聞かせてくださった、時を知らせる掛け時計の音色が、今まで聞いたどんな時計の音よりも美しく響いたことは言うまでもありません。そこには100年もの時を刻んできた、深みと重みが感じられました。
アクセスは以下。但し、初心者でもマニアでも、古時計を心から愛する(愛せる)方のみ、限定。悪しからず、お願いします。
工房亞陀ブログ http://oldclock.jugem.jp/
工房亞陀HP http://takumiada3.daa.jp/Photos/
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