苔の里
2015年6月11日(木) | テーマ/エトセトラ
わが君は千代に八千代にさざれ石の巌となりて苔のむすまで
「君が代」の元となった日本で最も有名といえる古今和歌集のこの歌はもとより、万葉集、新古今和歌集など、数多くの和歌に詠われている「苔」。草花とはまったく異なる生態系をもち、盆栽や庭園など、古より、日本人の美意識、そして、侘びや寂び、禅といった、その精神性にまで影響を与えたとても特別な植物です。
そんな苔が一面に生い茂る日本有数の苔の名所が石川県にあると知ったのはいつの頃だったでしょうか。小松市の日用町にある『苔の里』。国内の愛好家はもちろん、その苔庭を愛でるため、海外からもゲストが足を運ぶスポットにようやく訪れることができました。
加賀温泉郷の一つ、粟津温泉から約2キロ。木々に囲まれた山道をひたすらまっすぐ進んでいくと、やがて、小さな看板が見えてきます。「日用町P」と書かれた駐車場に車を停めると、その奥の方に『苔の里』の鑑賞コースの入口が。現在『苔の里』は、原則ガイドが案内しての散策となっており、環境整備協力金500円(小・中・高校生250円)を支払い、私も、ガイドの山際さんにお話を伺いながら、案内をしていただきました。
まず、びっくりするのが、その手入れの行き届いた美しさ! 緑の苔がまるで雲母のように広がる庭を歩く心地よさといったら他に例えようがありません。日向の環境を好むウマスギゴケ、半日蔭の環境を好むハイゴケ、日陰の環境を好むヒノキゴケなどなど、専門家の調査では、なんと48種類もの苔類が確認されているのだとか。山間の谷筋に沿ったその土地の風土が生んだ、それらの多様な苔が織り成す造形の一つひとつが、まさしく自然の芸術と呼ぶにふさわしいものでした。
そして、もう一つ心に残ったのは、それら苔庭のほとんどが私有地であり、その管理を住民の皆さんがなさっているということ。維持管理を担っているのは、地元の有志によって設立された「日用苔の里整備推進協議会」の方々。「今あるものを大切に、住民は仲良く暮らす」をモットーに、苔庭掃除や草刈りを日々怠らず、欠かさずに、続けていらっしゃるそうです。
聞くところによると、わずか7世帯の小さな集落。それでも力をあわせれば、世界から注目を集めるような、こんなにも素晴らしい文化を発信していくことができるんですね。
自分たちの暮らしと、自分たちが住んでいる町の美しさを守り、その大切な資源を次世代に引き継いでいく。日用町の苔庭の美しさは、そんな地元の皆さんの、土地への愛の結晶のように思えてなりません。
叡智の杜 http://forestofwisdom.org
加賀里山里海ビレッジ http://kanan-project.jimdo.com/
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