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【能登紀行】奥能登の奇祭「アエノコト」-田の神迎え

2022年12月23日(金) | テーマ/能登紀行

〈 この連載・企画は… 〉
石川県能登在住の編集者が能登半島の気になる場所に行き、まだまだ知られていないその土地や人の暮らしに触れ、紀行文として紹介します。今回は能登町で行われた神事「アエノコト」に参加してきました。


▶︎奥能登に伝わる「アエノコト」とは

石川県の能登半島の中でも北に位置する奥能登地域には、「アエノコト」と呼ばれる古くから伝承されてきた行事がある。これは田の神様へ、自然の恵みへの感謝と畏敬の念を示す行事。
ちなみにアエノコトの”アエ”とは、田の神様をご馳走などでもてなすことを意味し、「コト」とは神様にお仕えする祭事を意味する。

アエノコトには、12月5日の「田の神迎え」と2月9日の「田の神送り」がある。
田の神迎えは収穫に感謝し、田の神送りで五穀豊穣を祈るとされる。
アエノコトは本来は各家で行われ一般向けには公開されていないが、後世に広く伝えるべく、30数年前から能登町の『やなぎだ植物公園』で毎年一般向けの実演が行われるようになった。中 正道さんで2代目となる。なお、本来の田の神迎えの儀礼は12月5日の夕方から行われるが、植物公園での実演は一般の方向けに昼に行われる。

▶︎田の神様のお迎え

田の神迎えは、稲の苗を育てる苗代田に榊(サカキ)を持って神様を迎えにいくことから始まる。田んぼの水を入れる入り口付近で鍬を入れ、二拝・二拍手・一拝して神様にお迎えに来たことを伝える。
植物公園での実演は羽織袴で行われているが、昔は肩衣や裃姿で行う家が多かったようだ。アエノコトの様式については時代の変化とともに地域や家ごとでも異なっており、実演を行っている「能登町あえのこと保存会」の中さんによると、地区では裃は着用されていないが地元の神社の神事の際は氏子総代が羽織袴を身につけており、中さんが実演する際には羽織袴を着用している。

田んぼからの移動時、段差や狭いところの歩きにくい場所は、「滑りますので足元にお気をつけください」「段差になっております」などと田の神様にお声かけをし、家まで案内する。
田の神様は稲作・田を守り農家を助けるため一生懸命に農作業をする中で泥や稲の葉先などで目を傷めていると伝えられているからだ。
田の神様を見ることはできないが、その場にいるように振る舞いもてなす姿がアエノコトの特徴だ。

歩きにくい場所など丁寧に声かけしながら案内する様子
歩きにくい場所など丁寧に声かけしながら案内する様子

家の中に入るとまず囲炉裏で休憩していただく。田の神様は夫婦なので座布団も2枚用意されている。その後「お風呂が沸きました。こちらでございます」とお風呂へご案内し、ゆっくりと農作業の疲れを癒していただく。おもてなしするための御前の準備が整ったらお風呂から座敷へとご案内する。
実演の会場では囲炉裏があるためお風呂の後には囲炉裏へとご案内するが、囲炉裏が無い家では座敷に案内してしばらく休憩をしてもらうそうだ。

座敷に案内したあと御前につき、まず作物が収穫できたことに対して感謝を述べる。続けて、目が不自由な神様のために料理などの一品一品やお供えを神様の手前から説明していく。こうした感謝を伝える際や、料理の説明は、必ず神様の正面で行われる。
田の神様へのお供えする食材は自宅でつくられたものや近場で採れたものなどが用意されるが、昔は地産地消で身近で手に入るものに縁起を担いだと考えられている。アエノコトでお供えされる料理は家族で分け合って食べるとのことだ。

御膳で出される料理は、コシヒカリの小豆ご飯や納豆汁、煮しめ、刺身、たら汁、大根のなます(酢のもの)、尾頭付きの生のはちめ(メバル)など。食材は、すべて各家でつくったものや能登の豊かな里山里海で獲れた地物だ。
こうした料理にはそれぞれにいわれがあり、例えば赤飯ではなく小豆ご飯を出すのは、赤飯は「蒸す」ことから「虫」を連想するため縁起が悪いとされ、他にも焼き物は田んぼが焼けることを連想するため煮物や刺身などがお供えされる。

実演をしてくださった中さんによると、アエノコトは昔、お米を作る農家が十分に食べることができなかった時代に、米や魚を食べられる機会を作った先祖の知恵であるとも考えられているとのこと(奥能登地域にはいくつかそのような行事が存在する)。
アエノコトの様式には正式なものはなく、地域や宗派など家ごとで多岐に渡るが、基本的には大きな差がないようだ。ただそれでも、多様化する時代の変化とともに昔は手に入らなかった食材がお供えされ、いわれが定かではないものがもあるようだ。

中さんの、「農耕上縁起が良いとされるものや農家の願いにまつわるものは正確に伝えることに伝統や文化遺産としての価値がある」という思いが印象的だった。
普段当たり前のように食べている物に対して、生産者の思いや産地、自然との関わりについて考える貴重な機会となった。
アエノコトのような貴重な伝統文化が今後も受け継がれていくことを願わずにはいられない。

住所

石川県鳳珠郡能登町上町ロ1-1

電話番号

0768-76-1680

開催期間

田の神迎え:毎年12月5日、田の神送り:毎年2月9日

駐車場

あり(やなぎだ植物公園内)

公式サイト

アエノコト(ユネスコ無形文化遺産)

※掲載されている情報は、2022年12月28日以前に取材した内容です。時間の経過により実際と異なる場合があります。

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