坂道、という名の石段
2015年12月17日(木) | テーマ/金沢の雑学
金沢は坂道が多いことで知られています。
実際、平たんな道を探すことの方が難しいくらい、大小長短、さまざまな坂道が市内のあちこちに配されています。 とりわけ犀川と浅野川にはさまれた小立野台地、犀川大橋の南側に広がる寺町台地、ひがし茶屋街の背後に控える卯辰山――これら三つの丘陵地から派生する坂には印象的なものが多く、由緒や逸話も残っています。
ということで、個人的に気に入っている坂道のいくつかを、当コーナーで紹介してまいりたいと思います。 今回、紹介するのは「つばや坂」。
金沢は「坂道」が多いといいますが、そこには「石段」も含まれます。 石段は坂道ではない、という坂道原理主義者とでもいうべき坂道愛好家もいらっしゃいますが、これにこだわると金沢の坂道は楽しめません。 実にいい雰囲気の石段がたくさんあるからです。 それに、そもそも石段は急な坂道の上り下りを助けるために設けられたものなので、これを排除しようとする意見はいただけません。
話が脇道にそれました。坂道に戻ります。
「つばや坂」は別名「甚兵衛坂」ともいい、料亭『つば甚』の裏手から犀川河畔へ下る石段です。 その由緒を記す石碑はなく、比較的、新しく市民に認知されるようになった坂の一つと思われます(といっても近在の人と坂道愛好家以外にはほとんど知られていないと思いますが)。 斜面に桜の老木が何株かあって、花見の季節に訪れるのもいいでしょう。
この坂道は形状に特徴があります。 金沢には「W坂」と呼ばれる有名な石段がありますが、こちらは「N坂」(誰もそんなふうに呼びませんが)。 初めて利用すると不思議な感覚を覚えます。 かなりさびれた坂道(隠れ坂、あるいは忘れ坂といった風情)で、うっすらと生えた苔が実にいい感じ。 金沢を訪れた際にはぜひ、探し出してみてください。
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