島清恋愛文学賞受賞・山崎ナオコーラさんにインタビュー
2017年4月4日(火) | テーマ/ニュース
石川県が生んだ文豪と言えば、泉鏡花、徳田秋聲、室生犀星の3人がよく知られるところですが、日本で唯一の恋愛小説限定の文学賞、島清恋愛文学賞のきっかけになった島田清次郎(しまだ・せいじろう。明治32年~昭和5年)も忘れてはなりません。
現在、この島清恋愛文学賞(現在は金沢学院大学が運営)は、平成6年の創設以来、第1回の高樹のぶ子さんの『蔦燃』の受賞に始まり、小池真理子さん(第5回)、藤田宜永さん(第6回)、阿久悠さん(第7回)、岩井志麻子さん(第9回)、石田衣良さん(第13回)、江國香織さん(第14回)、桐野夏生さん(第17回)、あさのあつこさん(第18回)ら、毎年の受賞者はそうそうたる顔ぶれです。
今回、第23回の受賞者となった、山崎ナオコーラさんが金沢に来られた際、当社の編集者がインタビューを行いましたので、その内容をご覧ください。
――「島清恋愛文学賞」、受賞おめでとうございます。
山崎ナオコーラ:(以下、山崎)ありがとうございます。
――この本は、癌で亡くなられた御父様のおかげで書けた小説と伺いました。
山崎:はい。父が三年前に癌で死にまして、それをきっかけに癌についての小説を書くことにしました。父は、昔から人前でかっこつける人で、入院中でも、お医者さんや看護師さんにいい風に接して、自分を礼儀正しく見せようとしていました。長く入院していると、病院が社会になるんですね。身だしなみに気を遣う人だったので、入院してから毎日、 私はひげ剃りの手伝いに通いました。 楽しかったです。

――『美しい距離』は、人と人の間の距離感が印象的な作品です。
山崎:入院中の父、そしてお医者さん、看護師さんたちとのやりとりは面白かったです。私がお医者さんや看護師さんと話しているのを寝ながら聞いていて、看護師さんが病室から出ていったあと、「あの言い方は良くない。生意気に思われる」と注意してくる。父は死ぬぎりぎりまで仕事をしていて、入院中もメールで遣り取りをするなどして、外と繋がっていたんですけど、病院の中でも人間関係を築こうとしていたんですね。病気だからって、家族とだけ付き合いたいわけじゃないんだな、としみじみ感じました。
――なるほど。
山崎:父は日が経つにつれ、それまでできたことができなくなっていって、ひげ剃りの介助も、最初は洗面所まで肩を貸して連れて行く仕事だったのに、最後は寝たままの父の頰にかみ剃りをあてて、全ての行程を私がやるようになりました。父にとってはつらい日々だったと思いますが、私にとっては、これまでになく父と親密に過ごせた、かけがえのない日々でした。病院で看取るのも、いいものですね。
――山崎ナオコーラさん、ありがとうございました。

『美しい距離』
山崎ナオコーラ
文芸春秋
1,350円+税
関連情報
島清恋愛文学賞の由来となっている、作家・島田清次郎に関連して。
島田清次郎は作品『地上』が有名で、過去にテレビドラマや映画にもなっています。
金沢の「にし茶屋街」にある『金沢市西茶屋資料館』では、彼の当時の著作や資料が展示されていますが、この建物は著作『地上』の舞台となったお茶屋「吉米楼」を再現した建物でもあります。

2階には朱色の壁に金屏風、太鼓、三味線などが展示されています。また、観光ボランティアガイド「まいどさん」が常駐されていたり、たまに、お隣りの『西料亭組合事務所』からは芸妓さんの稽古の音が聴こえてきたりします。ぜひお立ち寄りを。
■金沢市西茶屋資料館
石川県金沢市野町2-25-18
入場無料
開館時間:9:30~17:00
休/なし
TEL:076-247-8110
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