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金沢小景

脈々と育まれてきた金沢の風物。
残したい、守りたい、ただそれだけの思いを込めて、大切な小景を届けます。

第9回

港町

写真提供/金沢市
港町

 金沢の海の玄関口、金沢港。大野川、犀川両河口を包含する港湾で、日本海沿岸のほぼ中央に位置する。
 かつては「大野港」「金石港」の2つに分かれていたもので、とくに旧大野港を擁した大野地区は古くから栄えた港泊地。奈良時代より大陸との往来があり、渤海国(698~926年)の船がしばしば来航していたという記録も残る。
 藩政時代には加賀百万石の権威を背景に、北前船がこの地を本拠として活躍した。いわゆる御手船、廻米船の呼び名で江戸や大坂を行き来したわけだが、この頃、商傑として栄華を極めていたのが銭屋五兵衛である。
 表向きは関西、東北の諸港との間で米や雑貨の移出、木材や海産物の移入を主としていたが、その裏で鎖国体制下では異例の(加賀藩が多大な献上金の見返りとして黙認したらしい)海外との貿易も行なっていたとされる銭五。ロシアとの通商はよく知られるところだが、一説ではアメリカと交易していたとか、オーストラリアのタスマニア島に領地をもっていたという伝説もある。
 やがて銭五は不幸な最期(河北潟の干拓・開発事業にまつわる獄死)を迎え、また北前航路の衰退にともなって大野・金石の港勢もまた衰えていった。先に述べた大野・金石両港の合併により金沢港が誕生したのは1954年7月のことである。
 現在、かつての栄華を偲ばせるものは少ないが、醤油蔵を中心に旧い町並が比較的よく残り、ぶらり散策を楽しんでいると、街中では得られない静かな時間と潮の香りを満喫することができる。

※掲載されている情報は、時間の経過により実際と異なる場合があります。(更新日:2019年5月27日)

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