第3回
撮影:苗加和毅彦(1999年撮影)

むかしのことだったのか
忘れてしまいたいことだったのか
雪見橋のたもとにたたずみ
遠くの山をみつめていると
不意に死んだ人々の記憶がよみがえる
川は石を洗い
土をかきくれ
流れとなって 渦となって
なにもかもを汚し
なにもかもを沈ませ
ついには彼方に消える
およそ橋というものは
もっとあやういものであってほしいと
願うのはわたしだけなのかどうか
中央に白い境界線の引かれた橋の上を
真夜中に繰り返し渡りながら
私の耳はひたすら川の音の闇の
その底にあるものをとらえようとしていた
犀川雪見橋
※掲載されている情報は、時間の経過により実際と異なる場合があります。(更新日:2017年3月28日)