犀星
2014年5月6日(火) | テーマ/金沢の雑学
室生犀星は、金沢出身の作家・詩人として知られています。
ですが、こんにち金沢市民が犀星について何かを語るということはほとんどありません。また犀星詩碑というものが犀川河畔に建てられていますが、訪れる人もめったにいないのです。
犀星の主要な作品、例えば、『性に目覚めるころ』『杏っ子』など代表作を読めば、感じられると思いますが、そこには金沢の別趣の雰囲気がそこはかとなくあるのに、当時の具体的な金沢は殆ど書かれていません。
あったとしても、『つくしこひしの歌』に犀川・桜橋が出で来るという程度です。ですので、犀星にちなんだ場所というのは、彼の育ったと言われる雨宝院を除けば、金沢にはまことにどこにもないのであります。
犀星の生い立ちは幸運から見離されたような哀惜があり、少年の心の底に払っても残る思いがあったと推察します。だから、上京して身を立てたかったのでしょう。
犀星にとって金沢は回避すべき街であったように思います。その分、遠くにいて自分の過去を一つひとつ訪ねるような街でもあったはずです。
犀星は金沢を代表する作家ではありますが、金沢は彼に幸運を与えることができなかったのではないでしょうか。
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