学年が進むにつれて勉強が楽しくなる、後伸び力の育て方(第5回)
頭が悪いのではなく、具体が入っていないだけ
前回「読解力は、自然に身に付く力ではない」という話をしましたが、
今回は、意外に自然に身に付かない、もうひとつの力についてお話しします。
例えば、算数の文章問題で、途中で単位変換を忘れたり、計算過程の間違いをしたりで、
秒速600mの自転車や、
97歳のお父さん、
1冊600円のノート
みたいな解答が出てくることがあります。
それ自体は微笑ましい間違いなのですが、うっかりミスで片付けたり、「しっかりやらないと」ということで済ませてしまうと大問題です。
勉強は抽象的な世界です。
例えば数字ひとつとっても、数字の大切なポイントはみんな順序に関することばかり重視しやすいのです。
だから、お風呂で1から100まで数えることばかりやるわけです。
数にはあと2つ、
1対1の対応(同じ性質のものを数字で表す、ぞうが3頭・アリが3匹でも数字としては3を用いる)
数の合成・分解
という大切な性質があります。この過程で「大きい・小さい」「多い・少ない」「加える・除く」といった、大切な概念用語を知ることになります。
国語と算数は一体で伸びるものです。
それらを抜いて、1から10まで言えたらいきなり加減を教え、
何度も反復してできるようになったらかけ算割り算に進む。
そうすると見事に文章題ができないけれども計算が得意で、国語が苦手という生徒が登場します。
そして学年が進むと「私は理系だからしょうがないね」という、よく分からないことを言うようになります。
小さい頃にきちんと具体物でたっぷりと扱い、
それに慣れたら、タイルや色板・積木のような半具体物でできるようになっていき、
数の概念や量感覚をしっかりと養います。
そこで、初めて加減乗除の計算を扱っていくのです。
すると国語と算数の力が両方備わった状態で、勉強ができるようになります。
いわゆる「進学校」というところには、こういう状態に陥っている生徒がたくさんいます。
受験という〆切、その前にはテストという結果を出すための突貫工事で、
必要な過程を省略して進んでしまったがために、
気合と暗記力、
周囲との競争
「将来から逆算して今ここまでやらなくてはいけない」的な思考、
などなどで、勉強と具体的な世界が結びつかないまま、
入試問題はこういう傾向だから、苦手を徹底的につぶしましょう。
テストはここが出るからやりましょう。
と、入試やテストは決して悪者ではないのに、間違った活用のしかたで臨んだがために、間違った乗り切り方をしてしまうわけです。
勉強は抽象的なもので、
その勉強の積み重ねで出来上がっている現代社会も、とても抽象度が高い社会です。
かつてのように、身近な生活の中で、具体的なものにたっぷり触れることはできないので、
子どもが小さければ小さいほど、
たっぷり具体的に、アナログに触れておくことが大事なのです。
➡第1回 「概念がある程度入ってからがお勉強です」はこちら
➡第2回 「思考力を育てるには?」はこちら
➡第3回 「情報処理能力と読解力」はこちら
➡第4回 「読解力は大きくなれば身に付くわけではない」はこちら
幼児・低学年コースの授業で使う教具。このコース出身の中学生の平均偏差値は66。センスをじっくり育てる。
※掲載されている情報は、2021年5月以前に取材した内容です。時間の経過により実際と異なる場合があります。
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